オススメ山道具 No.14
笹原 芳樹
コッヘル
元祖・ミゾーチタンコッヘルコッヘルの素材は、ステンレス、アルミニウム、そしてチタニウムが主なものです。いまや大人気のチタニウム(=チタン)製は、私の記憶では7年程前に世界ではじめてミゾー社の溝淵三郎氏が製品化し、その後爆発的に普及しました。
チタンのコッヘルは軽く、強く、錆びず、人工骨など医療機器にも使用されるほどで、アレルギー性もなく安全性が高いと、よいことずくめのようです。が、実施に使ってみて注意すべきこともあるようです。製造メーカーもあまり述べていない点に触れてみましょう。
軽いと言っても比重がアルミの1.6倍あり、鉄よりは軽いものの、板材をアルミの3分の2から2分の1くらいに薄くしないと、持ったときの軽さは実感できません。当然、薄い材の商品の場合、パッキングなどで無理をするとコッヘルそのものがつぶれてしまう可能性があります。「軽く強い」と言っても、額面通りというわけでもありません。

全盛チタンも料理には向かない?

地形図と登山地図また、薄材使用ということで、強火だと変色、変形しやすく、空だきすると、これはもうテキメンです。その上、チタンという金属は熱伝導率が低いため、コンロの火が当たっている部分だけがとくに熱くなり、焦げつきやすく調理には不向きなんです(煮物やラーメンなどはまだしも、強火が基本の炒め物は、弱火でやるか、ものすご〜くよくかき回すか!)。当然、お米を炊くのも不向きといえましょう。
家庭で使われている高級鍋がそうであるように、材の厚みが厚ければ均一に熱が伝わり、料理には向くものの重くなります。つまり、料理と軽量化は反比例するんです。ですから、料理を重視する人には、アルミやステンレス製のコッヘルをお勧めしたいと思います。とにかく軽量化優先の人なら、チタン製を使って「お湯をかければ食べられる」食糧計画を、ということになるでしょうか。

フッ素加工が増えている

コンパス最近は、フッ素樹脂をコーティングした焦げつきにくいコッヘルが目立ってきました。チタンが焦げつきやすいからということのほかに、水が貴重な山域や冬山では、汚れがペーパーでもきれいに拭き取れるので便利です。ただし、金属のスプーンなどでガリガリやるのはいけません。時として見かけますが、樹脂に傷をつけてしまいますので、こするならプラスチックやナイロン、木製のもので。また、コッヘルの中にボンベやバーナーを収納するときも、布などに包んで傷をつけないようにしましょう。


[写真キャプション]
元祖・ミゾーチタンコッヘル
右がチタンコッヘル(軽量重視派、410g、参考価格7,200円)、
左がアルミコッヘル(料理重視派、540g、3,800円)
最近愛用しているエバニュー社のチタン深型コッヘル。日帰りは小さい方のみで、泊まりの時に2組持つようにしている。フタはフライパンにも食器にもなる。小コッヘルには、通常サイズのガスボンベとバーナーがピッタリ収まる。

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