「この高度計、標高が全然合わないんですけどオ・・・。これ、ひょっとして不良品じゃないの?」---昔からよく言われるんです。話をお聞きしていると、どうも高度計の基本が分かっていらっしゃらない---買っていらっしゃる方が多い割に、そういう方が案外多いんですね。そこで、今回は高度計の基本中の基本です。
高度計と気圧計は同じ
高度計は、実は気圧を測っているのです。表を見てください。気圧と高度のこういう関係をもとに、ある地点での気圧を測ってその地点での高度を算出しているのです。ただ、同じ高度なら、いつでもどこでも同じ気圧だということではありません(高度表示も変ってしまう)。同じところにいたとしても、天気の変化によって気圧(=高度)は変化してしまいます。
ということは---高度計の表示は、標高が確実に分かっている地点で"コマメに自分で合わせる"必要があるのです。まず、山登りの出発地点でキチンと高度を合わせることが、高度計使用時の絶対条件です。駅によっては標高が書いてあるところもあります。なければ地図を見ましょう。自分がいる場所(現在地)が分かっていて、地図上にその標高が記入されていれば(例えば、三角点、標高点など)、何をおいても高度表示を合わせます(使っている高度計の表示修正方法を知らないなんて問題外です)。「あれ、山頂の高度が違ってる」なんてことを言ってないで、さっさと修正しましょう。これが高度計の基本中の基本。そうしておけば、標高がハッキリしないところでも「あと50メートルで○○のコルだ」てな具合に目安に使えるんです。
「いやー、地図が読めないんで高度計がほしいんですよ」というお客さんがたまにいらっしゃいますが、地図が読めないと高度計をもつ意味は限りなく薄れてしまします。
高度表示は狂うもの=天気予報ができる
同じところにいても気象条件が変化すれば気圧は変化すると言いました。ある時、やっとたどり着いた山小屋でビールを飲みはじめたら、すごい夕立。同じところにいながら200メートルも高度が上がってしまいました(気圧が下がった)。
---つまり、こういう利用法もあります。夕方目的地に着いたときの高度を覚えておいて、朝方高度を測ってみると、天気の傾向が分かります。例えば、高度が下がっていれば気圧は上がっているわけで、その時点では天気はよい方向へ向かっていることになります。機種によっては、数時間ごとの気圧を自動的にグラフにしてくれるタイプもありますので、一目で分かります。
気温変化で高度も変わる
高度計は「国際標準大気」のときの気圧と高度の関係を利用しています。その「標準大気」には「標準気温」という条件もあるのです(表の右列)。この高度なら気圧はこのくらい(のはず)というのも、実はそのときの気温によって若干ですが変わってしまいます。気温によって空気の密度が変化するからです。
高度計は、目安としてはかなり有効ですが、完璧ではありません。まとめを言わせてもらえれば、高度計を使うことで、地形図を見る癖をつけましょう!というところでしょうか。
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現在、表示板の見やすさ、電池を自分で取り換えられる、コンパスつきなどで一番人気のスント・ベクター(左)、同・アルティマックス(中)、同・オブザーバー(右)。2万2千円〜2万5千円。日本でおなじみのプロトレックも、表示が大きく、モードボタンを増やして扱いやすくした、ソーラーパワーの機種を出している。こちらは2万円を切る。 |
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