雪崩講習会
指導者の養成と研究活動の強化へ
中山建生 (雪崩講習会講師代表/神奈川県連盟理事長)
日本勤労者山岳連盟が『雪崩事故を防ぐための講習会』を実施して18年目を迎えようとしています。この間、勤労者山岳連盟に所属する会員以外のさまざまな人たちからの協力も得て、全国的な広がりが作られてきました。今日では登山界だけでなく「雪山」に関わるスポーツ関係者からも「雪崩教育」の必要性が求められ、より実践的な雪崩教育の普及と質の向上をはかることが急務となっています。

7月13日と14日に名古屋市で「全国雪崩教育交流集会」が開かれ、こうした問題に関心をもつ人たちが、それぞれの考えや実践の成果をもとに集まりました。登山者、山スキーヤー、スノーボーダー、スキーパトロール、安全管理者、山岳ガイドらに限っても、教育実践の成果を持ち寄り、よりよいものを生み出す機会がありませんでしたから、私たちにとっても意義のある集会となりました。

とりわけ、雪崩教育に関する情報の共有、将来の展望を具体化すること、あるいはそれぞれの特徴を生かす活動の検討が必要だと考える参加者が多かったようです。

「登山者の雪崩教育」をテーマに講演した信州大学の新田隆三先生は、現場での応用を求める登山者が専門家を引き出しそれらを活用することが必要であり、現在の雪崩教育の停滞を打ち破る意欲が大切だと指摘しました。

北海道登山者雪崩研究会の松浦孝之氏(道央連盟・札幌山びこ山友会)は、北海道の専門家の協力を得て講師の養成に力を入れてきたこと、今後は自らが研究テーマをもち、雪崩事故を防止したいと報告、雪崩ネットワークの出川あずさ氏は、今年、カナダ雪崩協会から講師を呼んで開催した講習会の成果と問題点を報告しました。

雪崩救助犬また、捜索救助犬を連れて雪崩講習会に参加した増田恵美子さんは、ハンドラー(犬を現場で捜索にあたらせる人)と登山者の共同した訓練が犬への理解を生むことを強調しながら、講習会に参加したことが登山や雪山の知識・体験の必要性を痛感させたと、雪崩講習会への期待を語りました。

この後、山ボード研究会の高橋玉樹氏、近畿ブロック講習会から滝上肇氏(大阪府連盟理事長)らが発言して、パネラーとしても加わり、全体での質疑応答となりました。

分科会では、雪崩教育の将来と指導者の養成をどう実現するのか、講習会の運営と事務局スタッフの役割はどのようにするのかというふたつのテーマに分かれておこなわれましたが、講師の養成に関しては、各分野の研究者・専門家と登山者との共同研究が不可欠で、それを具体的に追求していくことが確認され、講師の指導能力を高めるために、講師の研修と教育実習を、労山雪崩講習会の全国講師(56人)、地方講師(60人)、アシスタントや補助を務めた人を対象に実施していくことを確認しました。

また、全国講習会も講師の研修を重視するために、今後は生徒を対象とした講習会と講師を対象とした研修会に区別して開催することを予定しています。ブロック単位でも、北陸、関東のように、机上・実技の研修を進める準備が開始されました。なお、実務的な問題のひとつとして、講習中の事故に関して、保険契約を結ぶことの必要性が指摘されました。


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雪崩救助犬も関係者にはなじみになってきた。

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