ハイキングリーダー学校 香川
楽しくて豊かなハイキングの秘訣を学ぶ
石川友好 (全国連盟ハイキング委員・東京都連盟理事長)
「あ、あそこだ!」――四国、予讃線の無人駅=国分駅で下車すると、すぐ目の前に会場の「香川県青年センター」がありました。9月14日〜16日の3日間、ここで全国連盟主催の第6回「ハイキングリーダー学校」が開かれ、11都府県から講師・スタッフを含め106人が集まったのです。

定番課程にことしは「自然観察入門」も

無人駅といっても、ここは主要幹線です。1時間に2本の電車が停車し、6本も7本もの快速列車が駆けぬけていきます。奈良時代には讃岐国分寺が置かれた由緒ある土地でもあり、いまも四国八十番札所・国分寺にはお遍路さんの姿が絶えません。でも、「青年センター」は溜め池と線路にはさまれて静かで、広々とした水面が涼しい風を運んできます。コンビニを探したら、1キロ先にしかありませんでした。
受講生は、四国4県をはじめ、東京・関西・岡山の11都府県76人(日帰り含む)。
全国ハイキングリーダー学校は隔年で開かれ、ハイキング交流集会と交互に開催されます。その目的は、全国各地でハイキング活動を前進させていくために、全国連盟からの基本的な提起を講習することです。日程も3日間あり、ひとつの課目にそれぞれじっくり時間をかけて行っています。会場は、なるべくいろいろなところで実施するようこころがけ、今回は「全国的行事は初めて」という香川県にお世話になりました。香川県には労山で2番目に結成(1972年)された「高松ハイキングクラブ」もあり、地元からたくさんの会員が参加してくれました。
講習内容は、従来からの4課目((1)ハイキング活動の前進のために、(2)リーダーの育成とクラブ運営、(3)ハイキングに役立つ搬出法、(4)運動生理学)に加えて、香川県連盟で毎年実施しているという「救急法・三角巾の使い方」、そして今回初めての「自然観察入門――植物編」を第6課に取り入れ、好評でした。これは、去年のハイキング交流集会のなかで「自然観察を指導できるリーダーの育成」が要望として出されていたことに応えたものです。ひとつの課目の講義時間は1〜3時間をとりました。
その全部にふれたいところですが、(1)と(2)だけにしぼって、そのエキスを紹介しましょう。

「危なくて騒がしい」? 皮相な見方を超えて

第1課は、私の担当です。その中心点は「いまハイキングの課題は何か」を、5点に整理して提起したことです。
労山のなかでも、ハイキング層は会員の過半数を占めると推察されます。しかし、この層に対しては「自主性に乏しく、ついていくだけ」「危なっかしい事故予備軍」「集団で騒々しい」といった厳しい目で見られがちです。その活動を表面だけとってみれば、旅行会社の募集登山とたいして変わらないようにも見えます。
これに対して、私たちがどう考え、どう答えるのか、が私の提起の基調にありました。一言でいえば、私たちの活動はけっして「ハイキング層の現状を否定的にとらえる」ことから出発すべきではありません。そして、現状を前提としながら、会員に対する基礎教育の徹底(ただし、画一的なものではなく)や、豊かな企画力の育成と創意的なハイキングの実践をすすめるべきだ、ということです。

蓄積されているクラブ運営のツボ

つづいて行われた第2課の担当は、兵庫県「西宮明昭山の会」会長の原水章行さんです。ご存じ、原水さんは会員数・数百人という大所帯のハイキングクラブを長年にわたり運営されてきた方です。その経験をふまえた会運営の具体的方策とノウハウは、何度、聞いてもみごとな知恵のかたまりと言っていいものです。講義のレジメは今回のため特別に用意していただきましたが、「そのとおりだな」と思う言葉がたくさんありました。 その金言のいくつかを紹介しましょう。

「リーダー養成」の第一歩は、まず「会員」の養成から
「リーダー養成」をいう前に、まず「会員教育」が重要である。すべての会員に登山者としての基礎を身につけたハイカーになってもらおう。これは、日常の活動や系統的な教育の中で養われるべきものだ。鉄は熱いうちに打て。入会時からの教育を重視しよう。

リーダーに画一的なレベル、特に高きを求めない
リーダーの要件をあまり欲ばって、あれもこれもと重く考えない。まず、簡単な山、コースからやってもらう。初歩の段階で重視するのは地図とコンパスの使い方。大勢の人をまとめる力も重要だ。

リーダーの個性を尊重して多様なリーダーを多数つくる。質より量の重視
極端にいえば、「粗製乱造」でよいから、リーダーを大量に育成する姿勢が重要だ。ハイキングのフィールドは山だけでなく、高原、森、海辺、町と多彩だ。楽しみ方も植物、写真、スケッチ等々といろいろある。多様なフィールドで多様な楽しみ方をめざそう。

会としてのリーダー養成のシステム、対策が必要
リーダーが何人必要なのか、会員数とハイキング企画回数を考えて何人を養成するか、目標をもつ。まず教育スタッフ(担当者、講師)を明確に。講師が気安く引き受けられるように「何を、どこで、どのように教えるか」カリキュラムを明確にする。講師は複数で輪番でおこなう。実習はモデルコースを設ける。リーダーをやりやすい環境も整備する。参加者の体力差を調整するためのランク制や、下見の奨励(会からの費用助成)、事故時の緊急体制を明確にしておく。

リーダーの条件を考え、対象者を決める(要請する)。 「リーダー講習会」をいくら開いても、対象者がいないと成功しない。
「リーダー養成」というと、すぐに「養成講座をどうするか」に考えがいきがちだが、それよりもまず、リーダー候補者をどう見つけていくかが重要だ。そうでないと、せっかく準備した養成講座に誰も参加せず、がっかりすることになりかねない。「明昭山の会」では、例会(会山行)参加回数を個人別にカウントし、一定回数に達すると表彰し、まずサブリーダーになってもらうよう要請している。


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