九州の山々
くじゅうの登山道
時代の流れとともに登山道も大きく様変わりしてきた。とりわけ九州横断道路の開通が劇的な変化をもたらした。「くじゅう連山」への代表的な登山口と言えば、昔は、南側なら、豊肥線竹田駅からバスで南登山口、長湯温泉からバスで小倉峠または千人塚。東側が、湯平温泉から雪深峠を徒歩で越えて千町牟田に入る。北側は、豊後中村駅からバスで筌の口または筋湯温泉という経路だった。

マイカーの普及と横断道路の開通で、長者原、牧の戸峠からの入山者が増え、南の久住町からの登山者は減少した。 百名山ブームや周辺道路の整備のおかげで、最近はどのルートもまんべんなく歩かれているようだが、登山道の荒廃も目立つようになった。

集団登山による踏み荒らしなどで、「くじゅう別れ」から久住山への登山道は草付が消失してしまった。登山者が多く歩く登山道はU字溝となり、深いところで人の背丈ほどある。山体崩壊による登山道の荒廃。長者原から雨が池越のルートは土石流により道が消失した。また佐渡窪、白口岳からの土石流でも湿原が埋まってしまった。鉾立峠や鍋割坂は道が流水に洗われて荒廃している。登山道は、地元「くじゅうの自然を守る会」をはじめとする自然保護団体や自治体、企業の奉仕活動によって整備されていることを忘れてはならない。

興味ある道は、平治岳の北側、大船林道に下る営林署の巡視歩道。鉾立峠から西に立中山を経由して鉢窪を横断し、坊がつるからの道と合流する道。瀬の本高原から岩井が岳を経由して扇が鼻へ出る道などだが、山馴れた者でないと歩けないと思う。

今回は、三俣山の北東にある指山(1449メートル)を経由して北峰に至る道を取り上げてみたい。

今年の3月23日、会の仲間5人とマンサクの花を訪ねて歩いてきた。この登山道は、インターネットでも紹介されているので参考にされたい。

登山口9時30分着。登山口は長者原のヘルスセンター(バス停)から硫黄鉱山専用林道を10分ほど登ると、左手に指山自然観察路の入口があり、車は少し上の右カーブのところに置く。身支度をして、林道を諏蛾守越に向け砂防堤を右に見ながら歩くと左手に砂防ダム工事の専用林道の入口がある。ゲートをくぐり歩いて行くと、大きく右カーブするところに事務所のプレハブが建ち、正面の林の中に近道がある。この道に入らず林道を右に歩いてもよいが、今回はなごり雪を楽しむために林の中の近道を歩く。10分ほどで再び林道に合流して、まもなく終点となる。谷には砂防ダムがあり、右岸の岩壁は遭難救助訓練に使われている。

道は、谷の左岸に沿って上流にある砂防堤をめざす。堰堤を対岸に渡り、空谷を直上して最後は左のブッシュに入り、指山と北峰のコルに出る。左は指山、右は北峰である。尾根に沿いウツギやアセビの潅木帯の中を歩く。途中、迷いやすい個所があるが、右手方向に取るとよい。膝までの雪の中を、40分ほどで核心部の5メートルのルンゼ状の岩場に着く。

ここで休憩し、アイゼンを履いて態勢を整えた。最近梯子が掛けられて初心者でも通過できるようになってしまったが、梯子なしでも通過はできるので試してみることにした。

 最初の出だしは被り気味で、立ち木につかまり乗り越す。後は適当に岩を掴みながらの直上だ。ルンゼの中は雪があり、部分的に凍っているのですべりやすい。悪場を抜けると、道はいつしか潅木帯を抜けて、周囲はクマザサ、キリシマに変わっている。30分ほどで北峰に到着。小休止のあと本峰へ向かう。道はいったん鞍部に下るのだが、ルートを外すと腰まで雪にもぐる。そこをわいわい言いながら下って行った。鞍部から本峰に登り返すわけだが、途中露岩の下一帯が凍り、新雪が積もっているので非常に滑りやすい。アイゼンがあればよいのだが、今回は持ってこなかったので、騙しの一手でなんとかクリアして後続を引き上げる。山頂に着いてみると、みんな雪まみれの風体。1745メートルの山頂は風もなく、小春日和の天気で暖かい。のんびりと美味しくご飯を頂いた。

昼食後、久しぶりの雪景色を楽しみながら、踏み跡のない雪原を歩き南峰に立つ。3月、くじゅうでこれだけ雪があるのは珍しいことだ。南峰をあとにして、雨が池越の分岐へと向う。ここから眺める坊がつる盆地や大船山、平治岳の眺めは素晴らしい。道は大鍋の火口壁の縁を歩く。北峰から大鍋、小鍋のお鉢を時計回りに来る道と合流する。

 ここらは北側になるので雪が深く、しかも下が凍っているので非常に滑りやすくなっていた。分岐から道は雨が池に向かい一気に急降下する。最初は悲鳴をあげながら滑り落ちていたが、そのうちに聞こえなくなった。尻から滑る者、そのうち頭からダイブする者が出る始末。幸いなことに全員ケガもなく無事だったが。そんなこんなで雪まみれになって下ると傾斜が落ち、やがて草原となって雨が池の南端に到達する。少し行くと池があり、左手に巻いて潅木を抜け、長者原から来た登山道に合流する。

午後になり、雪解けがはじまって泥んこ道となっているので露岩のところで休憩。峠から長者原にむけて歩き、土石流が流れた谷を渡って下ってゆくと、左手に標識があり、この道は指山の裾にそって歩く指山自然観察路の入口とある(途中、指山方面の道標があり、ここから山頂まで小1時間ほど、さらに前述の砂防堤分岐まで10分ほどの道のりである)。この道に入り、小1時間ほど黒土の泥んこ道を歩き林道に出ると全行程終了である。

指山自然観察路の林道に近いところで、道の拡幅整備が行われ立ち木が伐採されているのを目にした。ここは第一種地域あるいは特別地域にあたるので、工事件名を記した看板があるはずと探したがない。おかしいと思いつつ帰宅して夕刊を見ると「地元観光業者が違法伐採」と出ていた。

参考タイム 大分 (90分) 登山口 (30分) 林道終点 (30分) 鞍部 (90分) 北峰 (40分) 山頂 (50分) 北峰分岐 (50分) 雨が池越 (30分) 指山自然観察路入口 (50分) 登山口/晴、残雪あり。帰路、湯平温泉で入湯後、大分に18時帰着した(大分発7時)。
25000地形図 大船山・湯坪


[写真キャプション]
上:本峰から南峰へ。久しぶりの"大雪"に大満足だ。
下:指山と鞍部から北峰に向う。

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