第12回全国登山者自然保護集会

「山岳自然保護憲章」づくりへの
基本構想を提起し、各地の運動を交流
京都市や京都新聞社の後援を受け、第12回全国登山者自然保護集会が京都タワーホテルを会場に、10月11日から12日にかけて開催されました。全国からの参加者は、北海道から熊本まで31都道府県277人となり大きな盛り上がりを示す集会となりました。

開会にあたり、集会を主管する京都府連盟の土田伸隆会長や、主催者を代表した守屋益男全国連盟会長が歓迎の挨拶を行いました。

集会の冒頭、後藤功一全国連盟自然保護委員会副委員長から、労山の自然保護憲章制定に向けた問題意識や方向性が提起されました。

第1日目は各地方から10人が1時間半にわたって報告を行い活動の成果が発表されました。その後、「労山自然保護憲章を考える」と題したパネルディスカッションが行われ、いま山岳自然保護をめぐってどのような課題があるのか、パネラーから提起されました。2日目は6つの分科会に分かれて討論が行われました。

憲章の原案作成に
2年という時間を提起

労山独自の山岳自然保護憲章をなぜ作るのかについて、後藤功一さんは次のように提起しました。地球的な環境問題がクローズアップされている今日、日本の山岳自然も危機的な状況を迎えている。これまでの労山の自然保護運動の成果をふまえた、登山者の指針となるべき内容をまとめていく運動にしていきたいと述べ、2004年の全国自然保護担当者会議で基本構想をつくり、2005年の全国集会で原案作成、2006年の全国連盟総会での山岳自然保護憲章の制定をめざしたいとしています。

1日目の各地の報告は次の内容でおこなわれました。「日高横断道建設中止を求めて」北海道道央地区連盟・今野平支郎さん、「携帯トイレ専用の山をめざして」岩手県連盟・村山正三さん、「丹沢の保全活動に参加して」神奈川県連盟・池野正さん、「清掃登山と自然保護活動」愛知県連盟・佐々木建壽さん、「白山の現状と自然保護活動」石川県連盟・山本俊和さん、「ポンポン山ゴルフ場建設計画をストップさせて11年」京都・ポンポン山の自然を守る会・大槻裕治さん、「自然再生事業と大台ケ原の自然保護」奈良県連盟・前圭一さん、「NO2測定と酸性霧・雨」大阪府連盟・池田茂さん、「武庫川ダム問題の現状」兵庫県連盟・安留紘一さん、「三嶺のロープウェイ問題と自然保護運動」徳島県連盟・久米英俊さん。運動の成果や今後の展望など、いま全国で注目されている活動内容が紹介されました。

山岳自然保護運動の4つの課題

全国連盟自然保護委員会は、今後の労山の自然保護運動の課題について、(1)登山の自由を守る運動 (2)山岳自然との共存を求める運動 (3)山岳自然の破壊を許さない運動 (4)地球温暖化と共存する自然保護運動を提起しています。

この課題の追究にあたっては、「登山の自由」は、生物多様性、生態系保全の課題と共存する視点が求められること。「山岳自然との共存」では、観光登山などがもたらすオーバーユースの解決やローインパクトな登山の追求が必要なこと。「山岳自然の破壊」では大規模林道や、ダム開発、酸性雨などの環境汚染などがあり、登山者の立場からの森林再生への提言が必要なこと。「地球温暖化との共存」では、山岳自然がどのような影響を受けているか、研究機関と連携した情報システムづくりなどを提案しています。

ローインパクトが
リーダーの資格となる時代

「山岳自然との共存」という課題は、山でのトイレの問題など、いわば山岳環境への加害者として、インパクトをどうすれば少なくできるのか、登山者一人一人に問われてくるテーマです。集団登山の問題についての本集会に対する全国連盟の報告は、リーダーによってまったく異なるとして、「限定的な集団登山」であるならば自然保護を普及することは可能だとして、「集団登山」が安易に否定されるべきではないとしました。

集団登山の是非はいろいろな場で論議されていますが、これからのリーダー(登山者)は、登山の安全への配慮ばかりではなく、計画したルートの環境への配慮が適切かどうかでも登山資格が問われる時代になってきたといえるでしょう。

2日目、分科会を11時過ぎに終え、全体会を開いて各分科会の報告と集会のまとめの発言のあと、全国の各ブロックと全国理事会から推薦された12人の山岳自然保護憲章制定委員が紹介され、参加者から拍手を受けました。最後に京都府連盟の麻田育良自然保護委員長の閉会の挨拶で本集会を終えました。

参加者から寄せられたアンケートには、「地球温暖化への対応など待ったなしの課題なので、行動憲章としてインパクトのあるものにしてほしい」「自然保護とは何か、労山の取り組む課題がよく分かった」「酸性雨の報告には自然破壊の現実を実感した。NO2の測定にはできる限りの協力をしたい」などの意見や感想が寄せられました。(本誌編集長・高橋友也)

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