白山山系(別山チブリ尾根)の登山道整備
石川県連盟自然保護部
本年度、初めて石川県勤労者山岳連盟(石川労山)で登山道整備事業に取り組むことになった。きっかけは、石川労山が団体加盟している、NPO法人「白山の自然を考える会(以後、考える会)」と石川労山、石川県自然保護課との話し合いの中であった。石川県側からの白山の登山道(小屋等の施設を含む)は、石川県がすべて管理していて、登山道整備・草刈・倒木処理等を業者に委託している。三者の話の中で、登山道の草刈りの幅が広く、貴重な野草ごと刈っているとの話が出た。驚きを示すと「それでは、自然保護の見地から登山道の整備を行なってみてほしい」との、県の自然保護課からの依頼であった。

理事会主体で年4回の整備

まず、県に予算提示を行なってほしいとのことで、「考える会」から提出してもらった(労山は実働協力の体制で、受託者名は「考える会」である)。本年度は、石川労山と「考える会」との話し合いで、チブリ小屋上部は石川労山、小屋から下部を「考える会」が担当することになった。石川労山内では、昨年度の総会で、登山道の整備事業を受けることを正式に決定した。しかし、なにぶん初めてのことであるため、初年度は、理事会主体で実施してみて、様子を見ることとした。

第1回目は、5月25日で、石川労山から3人、考える会から4人、計7人で巡視、簡易補修、倒木除去を実施した。この日は、昨年11月の季節外れのドカ雪による倒木の処理に多くの時間を費やした。倒木の処理には、多くの労力が必要なことがわかった。この時期、別山はまだ雪が深く、小屋からかなり下の、雪に覆われたブナ林までの作業であった。

第2回目は、6月22日に石川労山から2人、考える会から3人で実施した。石川労山は、チブリ小屋までを巡視した。第3回目は、6人で7月12日から入山し、チブリ小屋で泊り、13日に小屋から上部の草刈り、簡易補修、路面整備を実施した。

我々の心掛けた点は、(1)植生を傷めないように、補修、路面整地を実施する。(2)登山者の目から見た必要最低限の伐採にとどめる。(3)貴重な野草を避けて草刈りをするということだった。

路面補修の必要な場所が何カ所かあった。ぬかるんだ場所で、登山者がぬかるみを避けるために、道の脇を踏み植生を傷めていた。そこで、ぬかるみに丸太状に切断した倒木や枯木・石を置いたりして、登山者が脇に避けなくてもいいように対処した。また、道が崩れた場所では、どのように補修したらよいのかわからなかった。

第4回目は、9月7日に石川労山は5人、考える会は6人で巡視と草刈りを実施した。

登山者のマナー向上へも

今回の整備のために小屋泊をしたときに、ヘリ運搬用の網に包んで、ストーブや、こんな場所に不釣合いな色々な道具が小屋の外に置いてあった。

そのときは、単に昨年まで業者が使っていたものを撤去準備のために置いていると思っていたが、県の自然保護課に問い合わせると、なんと、業者が作業のために置いていたのではなく、雪遊びにきた人間が小屋の中に放置していたとの返答であった。人が遭難しないための目的で建てられた避難小屋に、何泊も快適に遊ぶためだけに、そんな荷物を放置するとは言語道断である。我々が整備する以上、以後そのような行為は許さないし、監視の目を強化したいと思う。そういったことから言えば、我々が登山道を整備することは、我々のためだけだなく、業者や、マナーの悪い登山者に対する歯止め・監視に一役買うことになるのではないかと考えている。

笹ユリの群落を復活させる

来年度もこの事業を継続するとすれば、課題としては、雪による倒木の除去作業に労力をかけることと、広く石川労山内からの参加者を募り、こまめに巡視や、整備作業を実施するスケジュールを組むことができるかである。

また、登山道が雨水の流れ道になることが多く、表土を削り流している箇所があった。その場所の処置として、細かい枯れ枝や、倒木を敷き詰めてみた。雨により流れ込んだ土砂がそれらに引っ掛かり、時間をかけてえぐれた個所を埋めてくれるのではないかという期待からの実施だった。この工法の効果を来年度以降も監視したい。「登山時報」の読者で、さらによい工法をご存知でしたら、ぜひ、石川労山までご一報願えませんでしょうか。

この登山道整備に参加したことで、地元の山「白山」をより身近なものに感じることができた。また、昨年以降、業者の草刈りが入っていないためか、ここ数年来咲いているのをほとんど見ていない笹ユリが咲き乱れているのを見ることができた。昨年までは笹ユリが花をつけることなく伐採されていたが、60センチくらいの幅で草刈りをしたため、笹ユリが刈られることなく花を付けたようである。それだけでも、登山道整備を引受けてよかったと感じている。

(文責・山本俊和)

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