携帯トイレを使ってみよう
永田京子(岩手・花巻山友会)
2003年10月11日〜12日におこなわれた第12回全国登山者自然保護集会の2日目、第2分科会で、私は「早池峰山における携帯トイレ普及の実践」について報告した。

分科会終了後、女性の参加者が5〜6人私に質問しにこられた。ぜひ携帯トイレを使ってみたいが、携帯トイレが手に入らないという。みなさんにはまず、もよりの登山用品店などに携帯トイレを取り扱ってくれるよう働きかけて、みんなで購入していくことで、入手の手立てを確保してほしい。岩手でもそのようにして始まり、意外とすぐに実現できたからだ。

個々の山のことはそれぞれの地域にお任せするが、携帯トイレの使用自体はメリットが大きいので、使ってみたい方には気軽にお教えしたいと思っている。私たちは近くの山でも遠くの山でも、どこの山へ行くときも必ず何枚か携帯トイレを持ち歩いている。

携帯トイレの使用は、あまり難しく考えず、まずは日帰り登山で試してみる。そして経験談や工夫したことを話し合おう。

携帯トイレに否定的な意見もあってよいが、一度も使ってみずに否定だけするのはよくない。山に新しくトイレを造ろうとすれば、高山植物の花咲く表土を広い面積にわたってはがし、何千万円もの建設費が必要になる。管理もしていかなければならない。

排泄物は究極の山のゴミ。ザックに携帯トイレを入れておき、ふとその気になったとき「持ち帰り」をしてみよう。

携帯トイレの使い方

携帯トイレは結構吸収力があるもので、適当な場所さえあればどこでもトイレ。「小」の場合、リュックサックの中にしまっても全然におわない。女性の方は、携帯トイレの袋が大きいので、草に触れたり虫やダニに刺される心配もない。男性の場合、「小」だけならプラスチックの適当なボトル(500cc位)を尿瓶がわりに使い、下山後中身をトイレに捨てて帰るのもいい。使用済みの携帯トイレは自分で持ち帰るようにしよう。

(1) 携帯トイレを広げる。それですぐ用を足してもいいし、さらに、しゃがんで下から携帯トイレの袋のふちを引っ張り上げお尻をすっぽりおおうようにすると、虫除けにもなり(人の目も?)、雨の時、寒い時などにもよい。

(2) 携帯トイレの中には吸収材が敷いてあり、そこに用を足す。吸収材からはずれたところにしてしまっても、程なく吸収されるので心配はいらない。使ったトイレットペーパーもここへ。

(3) 用がすんだら、まずたてに3つに折り、次に横にクルクル巻いてロール状にするとコンパクトにしまえる。2回使うときも広げやすい。適当なビニール袋に入れ、リュックサックにしまう。「大」の持ち帰りには、できればお茶の缶や密閉容器を利用し、テープで目張りを。再度の使用はしない。

(4) 使用済みの携帯トイレは各市町村のきまりに従い、たいていは「燃えるゴミ」で捨てられる。「大」の場合は「大」の部分をはがしてトイレに捨て、そのあとビニール袋などでしっかり包みゴミに出す。

(5) 携帯トイレは1個で2回程度使え、小さな子どもと親が一緒に使ったり、1泊2日の登山の時1人の人が2日間にわたって使用することもできる。みなさんも工夫してみてください。

早池峰では次のように呼びかけています。

●登山の前には必ずトイレへ。特に『大』はしっかりすませましょう。
●早池峰山頂には、携帯トイレを使うための清潔な「専用トイレ」があります。使用後は、使った携帯トイレをここに置いてきてはいけません。必ず自分で持ち帰りましょう。
●早池峰山頂には、どうしても携帯トイレになじめない方のために、ふつうのトイレもありますが、そのトイレの処理は、ボランティアの人たちが汲み取りと担ぎ下ろしをしています。
●遠方からの登山者のため「岳駐車場」のトイレ付近に、使用済み携帯トイレの回収ボックスが設置されています。ここには使用済み携帯トイレ以外のゴミは捨てないでください。
(ご意見ご感想をお寄せください。〒024‐0012 岩手県北上市常盤台1‐11‐6 花巻山友会自然保護部 永田京子まで)

<参考>
早池峰で使用している携帯トイレは「サニタクリーン」(両用可) 製造元「株式会社 総合サービス」東京都中央区八重洲1‐6‐19 福清ビル Tel: 03‐3271‐2818


[写真キャプション]
写真1:携帯トイレ「サニタクリーン」の中身 左:持ち運び用高密閉チャック袋 右:屎尿を吸収する便袋 (携帯トイレの写真提供=株式会社総合サービス)
写真2:持ち歩くときは、便袋を密閉チャック袋に中に入れる。使用前は丸めてザックの中へ入れることも可能だ。使用後は上部の穴を利用してザックの外側に取り付けることもできる。
写真3:洋式便器や折畳便器が設置されているところでは、高密閉チャック袋から便袋をとりだし、袋状になっている便袋の凝固シートを底にして便器にかぶせ、用を足す。
写真4:折畳便器がなくても、便袋を広げ、接着されている凝固シートに向って用を足す(木陰などで)。
写真5:使用後は、空気を抜いて袋の口を縛る(袋上部を切り取るとヒモ状になる)。
写真6:袋の口を縛った便袋を高密閉チャック袋に入れて持ち帰る。

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