前回のロープのお話の中では、テグス結びを、ぜひマスターしてほしい結び方として紹介しました。今回は、もうひとつの「これだけは」ということで、8の字結び(はちのじ、と読みます)です。これにはいくつかの種類があります。
8の字結びの特徴の第一は、結び目が大きく、ストッパーとして使えることです。例えば、ジャケットやカッパのフードのコードロックのすっぽ抜け防止に使うなら、これです。また、ロープの握り手のコブとしても有効です(写真1)。
さて、クライマーがロープをハーネスに結ぶときは、二重8の字結びを使いますが、ハーネスとロープを簡単に連結するときは、ロープの端を2つ折りにして、折ったところが末端になるように、2本をまとめて上述の8の字で結べばオッケーです。グレードの低い岩場を2番手で登るなら、こうしてつくった末端のループを安全環付カラビナを介してハーネスのビレイループに連結できます。
しかし、本格的な登攀であれば、カラビナを介さずハーネスとロープを直接結ばなければなりません。それが、二重8の字結びです。ロープの端から1メートルくらいのところに、8の字結びをつくっておいて、末端をハーネスに通してから、はじめにつくった8の字を逆から辿るように結べば、二重8の字結びができあがります。直径2メートルの大木や、電柱などへ直接ロープを結びつけることも可能です。
クライマー大注意!
懸垂ロープがほどける
近年、ロープを連結して懸垂する場合も8の字が使われるようになりました。これまでのスタンダードであるダブルフィッシャーマンに比べると、岩などとの接触面が少なく、ロープ回収時に岩やブッシュに引っ掛かる危険を減らすことができるからです。
そんな便利な結び方ですが、末端処理の方法を誤ると、とんでもないことになります。結んだはずの2本のロープが、ハラリとほどけてしまうのです。いわゆる「手を目に入れる」という末端処理方法ですが、写真を見ながら、やってみてください。誤った「穴」に入れると、簡単にというか、えっ?と思った瞬間に懸垂システム大破壊です。実際に、このミスによる事故は何度も起きています。もちろん結果は重大です。
オレは間違った穴や目には入れないよ---ホントに大丈夫ですか? ヘロヘロになっても、パニックのときでも大丈夫ですか? 私見ですが、ウロ覚えでミスをするより、シンプルに「8の字だけ」でもよい気がします。間違いやすい方法を懸垂下降で使うのは避けるべきでしょう。ちなみに、私はいまだにダブルフィッシャーマンですが。
[写真キャプション]
写真1: | 8の字結びの基本形。ロープを握るときのコブとして利用できる。 |
写真2: | 二重8の字結び。8の字結びをして、ロープの末端を矢印のことろから写真のように通していく。黒い線のように通して結びをきつく締めれば完成。上端のループのところでハーネスに連結したり、立木を巻いてロープを固定したりする。 |
写真3: | 8の字結びで懸垂ロープを連結したとき、末端処理で写真のような「目」に「手=ロープ末端」を入れてしまうと、8の字結びはほどける。このような末端処理で、懸垂中にロープがほどける事故が繰り返されている。「手を目に入れる」末端処理は、雑誌などで紹介されているが、正しい「目」がどれかお分かりだろうか。 |
写真4: | 写真3を裏側から見るとこうなっている。「手を目に入れた」後、それぞれのロープを互いに反対方向に引っ張るのではなく、結びの弛みを締め上げるように引き絞ったりすると、すぐにはほどけないようになることがある(もちろん最終的にはほどける)。軽くチェックしただけで懸垂をはじめると、とんでもないことになる。非常に危険。 |
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