7月8日と9日に高知市内に全国の山岳救助関係者が集まって開かれた「全国遭難対策協議会」(文科省、警察庁、消防庁、日本山岳協会、高知県などが主催=32ページ参照)で、総務省消防庁幹部が、長野県が検討している山岳救助に消防防災ヘリを使用した場合の有料化について「検討したことはない」と否定的な見解を示しました。
発言したのは、小池敦郎・消防庁防災情報室課長補佐。小池氏は講演の中で、公式見解ではないと前置きしながら、消防活動の無料を定めた消防組織法の定めや、有償で運送すると事業者となる航空法上、有料化は適切でないとしたうえで、警察も有料化を考えておらず、消防だけが有料化することはありえないと指摘しました。また、山岳遭難の定義付けの困難さ、海難や他のレジャーとの公平性、有料化による事務負担の増加などが懸念されること、消防隊員・航空隊員は「使命感を持って任務にあたっており、有料化に賛成する雰囲気はない」と述べました。
協議会では「山岳遭難救助の現状と問題点およびその対策〜ヘリコプター救助活動の現状と登山者への対応」「中高年登山者の指導と育成〜未組織登山者、中高年登山者の組織化と運営の助言」「学校登山のあり方とその育成〜リーダーの育成と山岳保険」という3つの分科会が設けられ、この討議の中では、携帯電話を使った「安易な救助要請」が最大のテーマになりました。しかし、日本山岳協会の遭対常任委員が「ケガが軽いことを救助隊側が批判してはいけない」と強調。生命にかかわる重傷者でも事故直後には「歩ける」と回答する場合も多く、救助隊員は安易であるかどうかの判断をしてはならない、このような風潮が広がれば、救助を必要としている人が頼みにくくなると指摘しました。
富山県や高知県の消防防災航空隊からも「安易であるかどうかの判断は現場ではできない。結果的に(安易な要請が)あるのかも知れないが、救助を求めている人がいれば出動するのが任務だ」という意見が出されていました。
「ステッキ不要論」に賛成
中西喜一郎
東京・光陽山の会
「登山時報」8月号に掲載された横須賀邦子さんの「あえてステッキ不要論」に、全面的に賛成です。
ステッキが定着している現在、この発言には勇気がいるでしょうが、そもそも各自にとって必要かどうかが検討されずに、ファッションのように使われていることは問題で、不要論は必要です。横須賀氏は、言葉を慎重に選んでいて、好感が持てます。
僕の体験でも、細い登山道で、向こうから地面をグサグサ刺しながら近づいてくる人に会うと恐怖を覚えます。あれほど尖っている必要はないと思います。「あなたにとって、本当にステッキは必要なの?」と聞いて回りたくなります。そして、使うなら安全な使い方を徹底してほしいと思います。
花の名前を覚える方法
増尾宏枝
奈良ハイキングクラブ
登山の楽しみ方は人それぞれ。山野草、樹木、野鳥、動物、地質や岩石などなど、多種多様にわたると思いますが、私は登山道で出会える植物に、そっと話しかけるようにしています。
「名前、教えて!」「――」。もちろん返事はありません。「シソ科の植物に似ているなあ。茎が四角いからねぇ」と独り言。
<アブラナ科の花は十字形>。名前を知っている花と似ているところを見つけては図鑑で調べます。「コレコレ、○△□◎だった。やったぁ」と判明したときは、うれしさも格別。しばらくは謎解きの充実感に浸れます。でも、残念ながら、すぐ忘れます。忘れないように、その花に出会ったら、できるだけ名前を口に出すようにします(傍迷惑ですよね、トホホ)。何度も、この繰り返しです。
では、私流の花の名前を覚える極意。その1 花や植物に興味をもつこと。「この植物の名前、何だろう?」って思ったときに、先輩に尋ねたり観察してみる。その2 植物と出会う機会を多くもつこと。人さまの顔を覚えるのと同じで、何度も見ていれば自然に覚える。その3 同じ植物を探してみる。いま出会った植物が近くにないか注意してみる。その4 傍らをキョロキョロ、樹上を見上げたり、とにかくゆっくり登山を楽しむ(ただし、転倒、滑落には十分注意!)。その5 自問自答を繰り返し、名前に親しくなる。その6 図鑑などで、覚えた植物の生涯(一生)を調べてみる。
植物たちは、子孫を増やすため涙ぐましい努力と工夫をしています。その不思議をひもといていくとき、そこには必ず感動が待っています。登山道での植物たちは目立ちたがり屋です。「この植物の名前は?」と疑問をもったときから、あなたは花博士です。(奈良ハイキングクラブ「あおがき」7月号から)
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